オレは昔、泣き虫だったらしい。
よく泣く、すぐ泣く、弱虫毛虫。はさんで捨てろ。
そんなオレが幼心に決めた言葉は「男は泣かない」だった(覚えてねぇけど)。
その言葉を知ってから、オレは泣かなくなった。
家族同然だった愛犬と別れたときも、
心から一緒にいたいと思った人を失ったときも、
ガンダムのプラモを踏まれて壊されたときも。
燃え尽きた小さな骨のカケラを長い箸でつかんでも、涙は出ない。
男は泣かない。そういう暗示なのかも知れない。
まるで心に固い殻を被ったようなものだ。
その殻が固すぎて、オレは感動も失ってしまった。
どんなに皆が感動するモノを見ても、オレの心は動かない。
欠落した感情。枯れてしまった涙。
「何か心にぽっかり穴があいたようだ」そんな言葉に共感を覚える。
オレの心はカラッポだ。だから、どんなに言葉を並べても、それは心からの言葉じゃない。
そして、誰の言葉もオレの心には届かない。